2024年11月15日
【受賞/表彰等】原子力国際専攻 岡本・三輪研究室 周文(ZHOU WEN)さん(D3)
2024年11月9日、原子力国際専攻 岡本・三輪研究室 周文(ZHOU WEN)さん(D3) が、とめ株式会社とめ研究所において、第5回とめ研究所若手研究者懸賞論文 最優秀賞を受賞されました。
<受賞した賞の名称と簡単な説明>
「第5回とめ研究所若手研究者懸賞論文」において、Physics of Fluids誌へ投稿した「Advancing Fluid Dynamics Simulations: A Comprehensive Approach to Optimizing Physics-Informed Neural Networks」について論文賞を受賞しました。
この研究では、流体力学問題の解決に向けてPINNs(Physics-informed Neural Networks)の性能向上を目指し、サンプリングや損失項のバランス調整、ハイパーパラメータの最適化に関する改良点を提案しました。この結果、従来のCFDシミュレーションに頼らず、高精度でロバストな流体解析が可能であることが実証されました。
<受賞された研究・活動について>
PINNsに基づく流れ場の解析は、流体力学の問題を解決するための有望なAI技術の一つとして期待されています。従来のPINNsでは、非圧縮性流体のシミュレーションにおいて、サンプリングポイントの選択、損失項のバランス、ハイパーパラメータの最適化に関する課題が挙げられていました。これらの課題は、PINNsの非収束を引き起こすことが多々あります。これらの問題を克服するため、本研究では流体力学解析のための改良された汎用的なPINNsを提案しました。このアプローチには3つの主要な改良が含まれています。残差に基づく適応サンプリングによって、残差が大きい領域で自動的にポイントをサンプリングする機能、損失項を効果的にバランスする適応型損失重み、および微分進化(DE)最適化アルゴリズムの利用です。本提案の検証として、低レイノルズ数、コヴァースネイ流、円柱後流の渦放出、ベルトラミ流の3つのケーススタディを改良されたPINNsを用いて実施し、誤差評価を行いました。シミュレーション結果は、解析解およびベンチマークされた計算流体力学(CFD)計算結果と良好に一致し、改良されたPINNsの効率と有効性を示しています。本研究により提案された改良型PINNsは、流体力学問題の解決においてCFDシミュレーションへの依存を軽減させる可能性を有しており、今後さらなる高度化を試みていく予定です。
<今後の抱負・感想>
この度、「第5回とめ研究所若手研究者懸賞論文」において受賞することができ、大変光栄に思います。この研究を通して、物理インフォームドニューラルネットワーク(PINNs)を用いた流体力学シミュレーションの新たな可能性を探求できたことに、深い喜びと満足を感じています。しかし、今回の成果はあくまで第一歩であり、今後もさらなる改良と応用の可能性を広げていきたいと考えています。特に、CFDシミュレーションの効率向上やAIを活用した流体解析技術の革新に貢献したいと思います。また、学術界だけでなく産業界にも有益な成果を提供できるよう、引き続き研究に精進してまいります。