2025年11月10日
田中 知 名誉教授が令和7年秋の叙勲で瑞宝重光章を受章
工学系研究科原子力国際専攻名誉教授である田中 知先生が、このたび令和7年秋の叙勲において、瑞宝重光章を受章されました。
田中先生は、昭和56年に東京大学工学部に助教授として着任されて以来、平成26年に退職されるまで長年にわたり、本学工学部および工学系研究科で教鞭をとられました。その間、核融合炉燃料材料工学、放射性廃棄物工学の発展に大きく貢献されるとともに、原子力エネルギー俯瞰学という新たな学問分野の確立に尽力されました。
学術面においては、東京電力福島第一原子力発電所の処理水でも注目されるトリチウムの固体表面における化学挙動、および、核融合炉材料中での水素同位体の拡散・脱離挙動などに関する先導的な研究で成果を上げられました。また、放射性廃棄物管理工学では、放射性核種やウランなどのアクチニド元素の溶液化学・吸着反応の研究を進め、高レベル放射性廃棄物処分の安全評価の信頼性向上に貢献されました。さらには、核不拡散、核セキュリティー、廃棄物処分を含めた核燃料サイクルの総合的評価を進め、原子力の社会的受容性を含めた幅広い視点での研究を展開されました。これらの優れた業績により、原子力安全功労者表彰(平成22年、経済産業大臣表彰)など、多数の賞を受賞されています。
教育・社会貢献においては、多数の若手研究者育成に貢献するとともに、平成23年には日本原子力学会会長を務められました。2011年3月の福島第一原子力発電所事故後には、福島県除染アドバイザーや日本原子力学会の事故に関する調査委員会委員長・福島特別プロジェクト代表を歴任し、原子力工学分野の発展と社会への貢献に大きく寄与されました。また、東京大学退職後の平成26年9月から令和6年9月まで、原子力規制委員会委員として(平成29年9月からは同委員長代理として)、日本の原子力安全規制の確立と強化にも尽力されました。
このたびの瑞宝重光章のご受章は、長年にわたる田中先生の多大な学術的、教育的、そして公共的分野での貢献が極めて高く評価されたことによるものであり、本専攻一同、心よりお慶び申し上げます。
田中先生の今後ますますのご健勝と、さらなるご活躍を心より祈念申し上げます。
東京大学大学院工学系研究科 原子力国際専攻
田中 知 名誉教授のコメント
今回この勲章を頂けたのも、原子力関係の教育・研究において、東京大学の教職員や学生など広く大学関係者のご協力があったおかげと考えます。原子力や放射線利用の重要性はこれからも大きいものがあると考えますが、関連してこれらの利用で発生する、発生した放射性廃棄物の適切な処理・処分は避けてとおれない重要事項です。また、これに関連しての人材育成・強化は現在大きな課題となっています。放射性廃棄物関係の教育・研究に携わってきた者としてこれらの問題の解決に少しでも貢献したいと考えるところです。

