専攻案内

専攻長挨拶

原子力発電や核融合のように原子核エネルギーの解放を利用した技術はもちろん、放射線やレーザー、量子ビームをものづくり、医療、生命分野へ応用するなど、原子力の範囲は広がっています。社会経済のグリーン化とデジタル化、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)において基本的な課題である、エネルギーの安定供給と気候変動問題の解決、健康的な生活の確保、インクルーシブかつ持続可能なスマート産業の創出に貢献することが期待されます。また、2011年3月に福島第一原子力発電所で事故が発生して以降も、新興国をはじめ、世界では原子力エネルギーの導入や原子力発電所の建設が続いています。原子力国際専攻には留学生が多いことからも、事故の教訓を生かした我が国の原子力技術に対する期待の大きさを感じます。

原子力技術の誕生と発展は、X線や放射能、核分裂の発見、相対性理論や量子力学といった、ノーベル賞級の発見や研究と歩みを共にしてきました。新しい課題に直面したとき、科学は「暗闇を照らす灯り」となってくれます。信頼できる新しい技術は、揺るぎない学術基盤から生み出され、一見すると無関係に思われる分野にも応用が利きます。つまり原子力は、物理、化学、生物、計算科学など多くの基盤的な分野の人材が活躍できる場だと言えます。

次に、科学の成果を実際に役立てるためには、「技術革新」が必要です。原子力発電や放射線・レーザーの産業・医療への応用、廃炉や放射性廃棄物の処理などにおいても、「原理的には可能である」とか「十分お金をかければ安全でよいモノが作れる」では、役に立ちません。理にかなった時間とコストとリスクの範囲内で実現でき、他に比べて競争力のある技術を育てていくことが大切です。その意味で、原子力は機械・材料、電気・電子、化学工学、人工知能、量子技術など様々な工学分野に支えられ、またこれらの工学分野を発展させる原動力にもなっています。

しかし、科学と技術だけですべてを解決できるわけではありません。天気予報の精度(=科学)が上がり、軽くて丈夫な傘(=技術)が手に入るようになっても、傘を持って行くかどうか、どの傘を持っていくかは、その日の予定、服装や荷物などを総合的に考えて判断します。同じように、原子力の技術をどのように利用していくかを決める社会のリーダーには、エネルギー問題、環境問題、気候変動、経済性、安全保障などのあらゆる側面を、国際的、大局的、俯瞰的な視点から捉える能力が求められます。また、想定外の事態においてもなるべく機能を失わず、早期に回復する「レジリエントな」社会や技術の視点も重要です。このようなことから、原子力国際専攻では、技術と社会の両者を包含したマネジメントの研究教育も行っています。専攻教員が兼担する東大工学部システム創成学科でもその基礎を教育しています。

 

原子力は、理学、工学から社会科学まで幅広い分野にまたがる総合工学です。多種多様なバックグラウンドを持った若い才能が原子力国際専攻に集まり、自分の専門分野を磨き上げながら、異なる分野の人々とも連携し、国際的・俯瞰的な視点を備えて豊かな未来を切り拓くリーダーに育っていくことを期待しています。

原子力国際専攻 専攻長 石川顕一

原子力国際専攻が目指すもの

持続可能な社会の構築に向けて

前世紀は「科学技術を基盤とした物質的な豊かさの追求」の時代でしたが、21世紀に入り、人類は「地球環境と調和した持続可能な社会の構築」を求めるようになりました。この中にあって、人々の豊かな暮らしを支える経済活動と、地球温暖化をはじめとする環境問題の対応の両立という、多くの要素が絡み合った複雑な問題が生じています。さらに、グローバル化する国際社会の中では、他国の状況や政策が我が国の経済活動や環境政策にも影響を及ぼす可能性があります。人類は、こうした複雑さの中で協力しながら発展の道を模索し続ける必要があります。

私たちは、科学技術知見に基づく現実的な解決手段として、原子力エネルギーと放射線およびそれらの利用技術の教育研究を行っています。特に近年では、プラント輸出をも含む国際協力を担える、リーダーの育成が国から求められてきました。その実現のために、原子力エネルギーや放射線の利用といった技術的領域と原子力と人・社会との関係といった人文社会的領域を融合させた教育研究を、国際機関や海外有名大学への派遣などを含む国際協力によって行っています。

福島原発事故から学ぶ

2011年 3 月11日の東日本大震災をきっかけとして発生した東京電力(株)福島第一原子力発電所事故(福島原発事故)を重要な機会と捉えて、本専攻における教育研究の理念を見直しました。将来への教訓として学ぶべき、福島原発事故の背景や根本原因として、以下のような課題が浮かび上がってきました。

(1)技術と社会の統合化力の重要性

わが国では、事故を起こさないための設計に努力を払ってきた反面、事故後の対応の備えが不十分でした。何かを想定した場合でも必ず残るリスクが顕在化したときの対応を真剣に考えて おく必要がありました。 後から考えれば当然とも思われる対応が実現できていなかった背景として、近年では普通の人々の望む安心と技術者の考える安全との間の乖離が広がったことなどの、技術の領域を越えた社会に関わる課題の存在が考えられます。原子力をとりまく環境が複雑巨大で変化するものとして認識し、わが国および世界に対する、人・社会および背景にある文化を理解し、高度教養(倫理、リスク、コミュニケーション等)に基づく社会リテラシーを持つような「技術と社会の統合化力」が必要です。

(2)構想力と俯瞰力の両立

設計上想定されている荷重や事象に対しては念入りな確認をしていた反面、津波や全電源喪失のシステム安全上の重要項目に対しては想定自体の取扱いが不十分であり、細部へ拘り重要なシステム欠陥を見逃すアンバランスが存在しました。 原子力を取り巻く環境が複雑巨大化しており、原理から考えるための体系的基盤知識に基づいた「構想力」と、分野や組織を横断して全体を見る「俯瞰力」を両方備えることが求められています。

強靱な社会の実現と国際貢献に向けて

福島原発事故は、文化的背景まで踏み込んで見直す機会であると考えられます。そのためこうした教訓を活かし、たとえ事故が起こったとしても、その被害を最小限にとどめ、速やかに復旧し、事故前より高い安全性を備えていく強靱なシステムを構築するための、研究計画を立てています。このような研究の成果は、世界の原子力安全の向上と、さらに他の複雑巨大産業分野の頑健性向上にも、貢献するものと考えています。

本専攻が目指す人材

以上を踏まえ、本専攻では次のような人材を育成します。

1. 人・社会に関する高度な教養を体得している人材

原子力基盤科学・工学の習得は当然として、人・社会に関する知識、態度、内外文化、考え方、常識などの理解に基づく、リスク・コミュニケーション、倫理などを含む高度な社会リテラシーを基盤教育に含めます。

2. 高度な教養を土台として、原子力安全・エネルギーと放射線科学・応用の体系的な知識と思考方法を身につけている人材

問題の全体像を理解するために、原子力を専門とする学生が知っておくべき基盤知識(原子力基盤科学・工学)を効率的に習得可能な、コアプログラム、専門基礎、特論から構成される体系的講義を行います。

3. 各々の分野において、学術とその活用に係わる研究・開発・計画・設計・生産・経営・政策提案などを、国際的な視点から責任を持って担うことができる人材

領域横断型のプロジェクト型演習では、複数の研究室の専門領域や先端的研究課題に取り組むことで、構想力、俯瞰力およびリーダシップを養います。

4. このような活動を通して、未踏分野の開拓や新たな技術革新に繋がる研究へと果敢に挑戦し、人類社会の持続と発展に貢献する人材

国内外機関連携による課題解決型のプロジェクト型演習や修士論文研究、博士論文研究を通じて、未踏分野の開拓や新たな技術革新に繋がる研究へと果敢に挑戦し、人類社会の持続と発展に貢献する人材を育成します。

専攻案内パンフレット

2019年度 原子力国際専攻  専攻案内パンフレット

2019年度
原子力国際専攻  専攻案内パンフレット

【冊子をご希望の場合のお問い合わせ先】
〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学大学院工学系研究科 原子力国際専攻事務室

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